自己査定時代 融資渉外マンの知識度チェック

   99年3月、金融監督庁から金融検査マニュアルの最終とりまとめが発表された。
   リスク管理重視、自己査定時代の融資渉外マンは、融資先企業の財務担保知識、資金ニーズ把握知識、さらに企業の実態把握の知識や実践的スキルが要求される。
   融資渉外マンとして、自分にどの分野が強いのか、逆に理解度がまだ今一歩のところはどこなのか。何となく自分では分かっていても冷静に自分の強み・弱みを整理して、融資渉外マンとしてまず何をしたらよいかがハッキリ認識することが自己のレベルアップに欠かせない。
   ここで紹介する、融資渉外マンとしての知識ノウハウ理解度チェック表は、「財務・担保編」「資金ニーズ把握編」「実態把握・セールス編」の3つから出来ている。また、それぞれの編について、経験1年以内の者であればマスターして欲しい項目は分類ランク「Ⅰ」、2年以上の経験者でマスターして欲しい項目は分類ランク「Ⅱ」、3~4年以上の経験者でマスターして欲しい項目は「Ⅲ」の表示をしてあるので、自分の経験度合いと見比べでチェックして欲しい。

財務・担保編

   「財務・担保編」では、まず決算書の見方、経営指標の見方、税務申告書の見方、財務関係のチェックと不動産評価や抵当権設定に関係するチェックさらに企業経営情報収集力などのについて聞いている。できるだけ実戦的なチェック項目を選んでいる。設問数は二十個だ。
   不動産関係のチェックは少しレベルが高いかもしれないが、担保評価、融資セールスを自信を持って進めるには欠かせない項目だ。

自己査定  ○(自信ある)、△(何とかできる)、×(自信ない)

No チェック項目 分類ランク 自己査定
1 貸借対照表・損益計算書の記載構成が分かる  
2 個人事業主の税務申告書(青色・白色)の記載内容が理解できる  
3 財務分析に必要な各種経営指標の算出とその見方が・意味分かる  
4 資金繰り表の仕組みが分かる  
5 経常収支比率の仕組みが分かる  
6 試算表と決算仕訳の仕組みが分かる  
7 税法上の減価償却の仕組みが分かる(定率、定額償却、特別償却)  
8 税務申告書の別表4(利益処分)、11(貸倒引当)、16(減価償却)の見方が分かる  
9 粉飾操作に利用されやすい勘定科目とその粉飾操作例について理解している  
10 社会保険料(事業主負担分、源泉控除分)の内容と仕組みを理解解している  
11 企業の会計部署の役割や業務(売掛、買掛、回収業務、手形管理、資金繰り等)について理解している  
12 法人登記簿謄本の仕組みや注意事項が分かる  
13 調査機関、COSMOSⅡ等からの決算情報、経営情報の入手活用ができる  
14 不動産登記簿の仕組みや注意事項が分かる  
15 会社や経営者が保有している不動産等の洗い出し調査することができる  
16 建築基準法、都市計画法の規制ポイントについて理解している  
17 借地・借家の法律や権利譲渡にかかる税務知識の概要が分かる  
18 不動産の立地条件に応じた評価ポイントを知っている  
19 抵当権の法的意味や設定解除等の手順を理解している  
20 根抵当権の法的意味や設定解除等の手順を理解している  

資金ニーズ把握編

   「資金ニーズ把握編」では、企業の資金需要の分類に分けて理解度を聞いている。また、融資判断に欠かせない、資金繰り表、経常収支比率、試算表、決算仕振等の分析力ヒアリング力をどこまで習得しているについてもセルフチェックして欲しい。
   保証協会保証付き融資の渉外ノウハウは、セールスに欠かせない。代位弁済請求に関係する知識は、融資リスクマネジメントを確実に進めるために必要だ。
   環境変化の激しい中では、赤字企業がリストラに取り組んだり新分野へ果敢に進出することともなう資金ニーズ案件もある。これらの融資案件にも時期を失することなく果敢かつ確実に取り組んで、さまざまな業種業態で融資渉外マンとしての経験を積んで欲しい。

自己査定  ○(自信ある)、△(何とかできる)、×(自信ない)

No チェック項目 分類ランク 自己査定
1 割引手形取り上げのポイント、注意事項を理解している  
2 季節資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
3 賞与資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
4 決算納税資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
5 経常運転資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
6 長期運転資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
7 設備資金資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
8 増加運転資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
9 減産、滞貨、赤字資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
10 赤字企業リストラ資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
11 新分野進出にかかる立ち上げ資金の資金需要把握、返済資源検討、取扱手順を理解している  
12 都道府県等制度資(協会保証付)の取扱手順を理解している  
13 プロパー融資(協会保証付)の取扱い手順を理解している  
14 代理貸付(中小公庫等)の取扱い手順を理解している  
15 協会保証付き融資案件の代弁請求事由等を理解している  
16 個別先へ資金繰り表の内容分析、問題点のヒアリングができる  
17 個別先へ経常収支比率の内容分析、問題点のヒアリングができる  
18 個別先へ月次損益、試算表の内容分析、問題点ヒアリングができる  
19 個別先へ各種経営指標の内容分析、問題点ヒアリングができる  
20 個別先へ決算仕訳振りの内容分析、問題点ヒアリングができる  

実態把握・セールス編

「実態把握・セールス編」では、新規開拓ノウハウを持っているか、対象企業の経営実態を把握する分析力があるか、対象先企業の育成や営業支援となるネタ捜しの実戦ノウハウを持っているかなどを聞いている。
   ここでは、小売・卸・製造業・サービス飲食業、と業種別に融資先の経営実態を分析する力があるかという実戦的なチェックがあるのに注意してほしいこれからは、資金ニーズだけに頼ったセールスでは競合金融機関との差別化はできない。どこまで、対象先の経営実態を把握できるかで、融資渉外の力が試される。

自己査定  ○(自信ある)、△(何とかできる)、×(自信ない)

No チェック項目 分類ランク 自己査定
1 新規開拓見込み先のリストアップができる  
2 新規開拓先の訪問準備手順を知っている  
3 新規開拓先のキーマンへの切り出しネタ捜しのノウハウを身に付けている
4 新規開拓先の実権者アプローチのノウハウを身に付けている
5 経営者の経営姿勢や営業方針などを聞き出して経営課題を見抜くためのノウハウを身に付けている
6 経営者の人物像、資質を見抜くための会話ノウハウを身に付けている
7 外注先、仕入先、販売先などの取引先関係を円滑に聞き出すノウハウを身に付けている
8 他行取引状況やその問題点などを聞き出すノウハウを身に付けている
9 社内の労務や組織運営上の問題把握の会話テクニック、情報収集方法を身に付けている
10 (小売業の場合)売場を見て、商品構成、売場作り、在庫の問題把握のポイントが分かる
11 (卸売業の場合)営業組織を見て、営業体制、販路、在庫状況の問題把握のポイントが分かる
12 (製造業の場合)生産ラインを見て、工程ラインの問題把握のポイントが分かる
13 (サービス業の場合)サービス提供現場を見て、品質管理、労務管理の問題把握のポイントが分かる
14 (飲食業の場合)メニューや店内を見て、メニュー提供や労務管理の問題把握のポイントが分かる
15 社内のOA化、ネットワーク化、POS導入状況等について実態把握するためのポイントが分かる
16 節税対策の各種施策が説明・提案できる
17 円滑な事業承継のための各種施策が説明・提案できる
18 営業斡旋、不動産情報、地域情報等の活用や提供による新規開拓アプローチができる
19 M&A(合併、業務提携)案件のアプローチや方策提案ができる
20 社員福利厚生施策に関する財形、社内ローン、制度充実にかかるニーズ把握や方策提案ができる
21 私募債発行や私募債償還資金借入等にかかるアプローチや方策提案ができる
22 ベンチャーキャピタル資金導入や株式公開ニーズにかかるアプローチや方策提案ができる

融資渉外スキル 自己査定

   以上、三つの分野での融資渉外マンとしての評価結果を「自己査定結果表」(図表四)にまとめてみよう。各編のⅠ(初級)、Ⅱ(中級)、Ⅲ(上級)のレベルごとにどれだけの評点となったか合計して評点計の満点の値に対する比率を算出してみよう。
   90%以上がランクA、60~89%がランクB、59%以下がCランクだ。この評点結果から、自分の自信ある項目、もっと努力すべき項目がはっきり分かる。

自己査定 ○(自信ある)3点、△(何とかできる)2点、×(自信ない)0点
ランク A=90%以上、B=60~89%以上、C=59%以下

自己査定結果表

○(3点) △(2点) ×(0点)
財務・担保編 個数 評点 個数 評点 個数 評点 満点 評点/満点 ランク
Ⅰ(基礎)設問数 7 21
Ⅱ(中級)設問数 5 15
Ⅲ(上級)設問数 8 24
20 60
○(3点) △(2点) ×(0点)
資金ニーズ把握編 個数 評点 個数 評点 個数 評点 満点 評点/満点 ランク
Ⅰ(基礎)設問数 8 24
Ⅱ(中級)設問数 7 21
Ⅲ(上級)設問数 5 15
20 60
○(3点) △(2点) ×(0点)
実態把握セールス編 個数 評点 個数 評点 個数 評点 満点 評点/満点 ランク
Ⅰ(基礎)設問数 6 18
Ⅱ(中級)設問数 7 21
Ⅲ(上級)設問数 9 27
22 66