取引銀行がある日ペイオフになったら、どうなるの?

ペイオフ画像_photo-6    「商品を卸している取引先が倒産した!」という最悪の情報を耳にした場合、経営者がまず取るべき行動は、「倒産」の意味、事実関係の確認である。
   社更生法の申し立てを行ったのか? あるいは廃業を前提に債権者会議の案内があったのか? そういった事実確認が取れて初めて、経営者は的確な判断と素早い行動が取れる。誤った情報からは誤った行動しかできず、結局、自店の売掛債権の保全もできなくなってしまう。
   銀行倒産も全く同じだ。一般的に起こり得るパターンは「業務停止命令発動」か「自主再建断念による営業譲渡の発表」だが、これらが自店に与える影響をしっかり理解するのがまず先決だ。

「業務停止命令」の中身と対応策

   「業務停止命令」とは、金融機関が最も恐れる行政処分である。つまり金融監督当局から何の予告もなしに、ある日突然、金融横閑に対して「死亡宣告」がなされるのだ!
   199×年×月1日、午前8時30分、朝の開店前の営業準備で忙しい某金融横閑のY支店に本部から一枚のFAXが流れた。
   「緊急連絡! 支店長殿 本日8時00分、銀行法第26条の規定にもとづき監督当局からわが社に対して【業務停止命令】が発動された。支店職員は、冷静沈着に窓口の対応に当たり無用の混乱が起きないよう万全の対応を取るよう措置きれたし。今回の業務停止により本日業務開始時より取り扱いできない窓口は以下のとおり…。(以下略)」
   このような命令が出された瞬間に窓口取り扱いが強制的にストップされる。この命令の具体的な中身と、その対応策について優先順位に紹介したい。

(1)預金等の払い戻し停止

今まで実際に発動されたケースでは、次の預金等の払い戻しがストップされた。
   ①ATM等の機械による払い戻し
   ②1億円以上の融資残高がある預金者の借入残高相当額の定期性預金等
   ③満期未到来の定期性預金等

   ただし、96年11月阪和親行に出された業務停止命令では、②は翌年1月に、③は翌年8月に解除された。従って、今後も命令内容は全く同じとは限らない。
   ともかく、財務省では、預金者が預け入れた預金は100%保護きれ、一般の事業法人の会社整理のように、預金債権がカットされることはないと断言している。(ただし、2001年3月までの措置。それ以降は「ペイオフ」といって1000万円以上は切り捨てられることとなるが、この限度額見直しの動きが政府与党内にあり、現在金融審議会で検討検討中である)
   これらのことから推察して、急な用立てがあって定期預金を中途解約したいとか、預金口座がある支店は遠方であるため普段は近所の機械コーナーからカードで引き出しているといったケースでは、現金引き出しができず、窓口で混乱が起きることが予想される。
   また、1億円以上の借入れがある預金者の場合、通常は預金高の方が融資額より少ないわけだから、 定期預金などが拘束されることとなるため、その定期預金を当座の資金繰りに当て込んでいる場合は資金ショートとなる恐れがある。
   このため、従来であれば1~3カ月程度使わない金は短期の自由金利定期にしておこうといった形で当座預金から振り替えて定期にすることが多かったが、今後はこの方法は簡単には選べなくなる。
   この対策として、定期にするなら他の借入れがない金融機関で、といいたいが、ある程度預金取引の実横がないと普段の融資交渉が難しくなる恐れもあるため、これも単純にお勧めはできない。要は、近くの金融機関にそこそこの流動性預金を確保しておくことしか方法はないかもしれない。

(2)新規資金の貸付、手形割引、債務保証等の融資業務の停止

   営者にはこれが一番頭が痛い。経常運転資金など手形借入れで定期的に書き換えで資金繰りを確保していた場合、新たな書き換えができなくなったり、設備拡張資金などで融資申し込みや借入書類の提出も終えて、後は融資実行を待つだけというところで、突然、融資実行が凍結され、事業が頓挫してしまう恐れがある。
   毎月、売り先から手形をもらってそれを取引銀行に割り引いて支払資金に当て込んでいた場合も、これが突然拒否されてしまう。いずれも、新たに融資してくれる金融機関を自ら開拓して資金調達するしかない。ただ、通常、業務停止命令が出た場合、政府系金融機関(国民金融公庫、中小企業金融公等)や各地市町村・萱府県・保加琴茶に対して連鎖倒産防止のための特別融資の実施が要請されるので、これらのことから推察して、急な用立てがあって定期預金を中途解約したいとか、預金口座がある支店は遠方であるため普段は近所の機械コーナーからカードで引き出しているといったケースでは、現金引き出しができず、窓口で混乱が起きることが予想される。
   また、1億円以上の借入れがある預金者の場合、通常は預金高の方が融資額より少ないわけだから、これらの機関の窓口や商工会・商工会議所に相談するといい。
   商工会・商工会議所は、普段から国民金融公庫や市町村・保証協会融資の相談窓口になっているので、日ごろから最寄りの商工会・商工会議所とのパイプをつくつておくことをお勧めする。融資相談のほか、さまぎまな情報交換にも役立つ (今回の貸し渋り対策相談で特別週間を設けて夜8時まで相談にのっていた商工会議所もあった)。
   そのほかに、別に取引金融機関をもう一つ作って融資実績を積み上げておくのも予防策の一つである。
   なお、業務停止命令が出された金融機関から借入があって、利息や元本の返済が滞っている場合(いわゆる不良債権融資にあたる場合)、融資金の回収管理は公的な回収整理銀行等に移されるため、今まで以上に取り立てが厳しくなることが考えられる。さらに時間を経て、破産の申し立てが行われて強制的に会社清算に追い込まれることも考えられる。弁護士などと相談し、心してあたるしかない。

(3)その他の制約

   前記以外に、振込み・手形取り立てができない、夜間金庫や貸金庫が使えない、手形小切手が使えなくなる等の不便が生じることがあるが、時間をかければ何らかの代替策があり得るので詳細は割愛する。

銀行倒産の兆候をどう見抜くか?

   過去の銀行破綻を見ると、そこで働いている社員でさえ直前まで自分の会社の倒産を予想できない様子だから、外部からその兆候を知ることは難しい。
   経営者としては、以下のポイントでそれを判断するしかない。

  1. 貸し渋りの雰囲気があった場合、そのわけを冷静かつ丁寧に聞き出す。
       融資申し込みに対して、「貸したくても代せない」自社の株価がいくらになるかハッキリしないと、貸せるかどうかお答えできない」
       こんな答弁で融資を断ちざるを得ない金融マンも辛いが、融資する側の会社の株価次第で自分の商売の運命が決まるなんて、そんなバカなと言いたい。
  2. 中で働く金融マンに覇気がない、雰囲気が暗い、自分の会社や上司を悪く言う。そんな雰囲気がないかど、観察してみる。
  3. さまざまな週刊誌などで金融機関に閑する記事を拾い読みをして、各金融機関の不良債権額、貸し倒れ引当額、株価さらに貸し渋りに関する情報収集に努める。
  4. 比較的大きな金融機関であれば、自社のディスクロージャー年誌を各支店に備え置きしているので、それを読んで、日ごろどのよのような姿勢で地元の産業振興に臨んでいるのか、いくつかの金融機関同士で比較対照してみるといい。